「座を起たずしてよく一切の仏事を成す。」
これは、唐代中国の高僧 不空三蔵(ふくうさんぞう)が翻訳した『菩提心論』に記されている言葉です。
不空三蔵は、インドから中国へと密教を伝え、多くの仏典を翻訳し、日本の真言密教にも大きな影響を与えた人物として知られています。
この短い一文には、行動や言葉以上に「心の在り方」そのものが仏の働きになるという深い智慧が込められています。
レイキヒーリングでは、施術者が何かを「する」ことよりも、穏やかで整った心で「ある」ことが癒しの本質とされています。
つまり、ただそこに在ること、ただ穏やかであること。それ自体が、すでに癒しであり、はたらきであり、仏事でもあるのです。
この言葉の深い意味と背景
座(ざ)とは単に座っていることではなく、心が安定した状態、禅定(瞑想状態)、さらには「悟りの境地」を象徴しています。
仏事とは、仏教の実践、法要、衆生を救う行い、つまり「仏としての働き」そのものです。
この一節が伝えようとしているのは、
「深く整った心の状態にある者は、外側で何かをせずとも、その在り方そのものが仏の働きとなる」という教えです。
私たちの日常にどう活かすか
この言葉は、私たちの忙しい日常にも大きなヒントを与えてくれます。
- 焦って行動に出る前に、まずは心を整える。
- 「する」ことばかりに意識を向けず、「ある」ことの質を高める。
- 言葉よりも、存在の静けさが人に影響を与えることがある。
たとえば、悩んでいる人に何かを言おうと考える前に、ただそばで黙って寄り添うこと。
それだけで心が軽くなることもあるでしょう。
そうした「無言のはたらき」が、仏事であるとも言えるのです。
日常に取り入れるヒント
実践 | 具体例 |
---|---|
毎日の「座る時間」をつくる | たとえ5分でも静かに座り、呼吸を整える |
行動前に一呼吸置く | 反応する前に、心の中心に戻る時間を持つ |
在り方を大切にする | 焦らず、「今ここに在る」ことに意識を向ける |
おわりに:あなたの静けさが、世界を癒す
仏教の教えは、けっして遠い山奥の僧だけのものではありません。
私たち一人ひとりが、自分の中に「仏の心」を見出すことができます。
あなたが静かにそこに在ること。
それ自体が、すでに誰かの癒しであり、光となっているのかもしれません。
座を起たずして、すべての仏事を成す。
この言葉が、あなたの心と日々に静かな力をもたらしますように。